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「教育者」としての高校野球監督

1979年8月21日、池田を破り春夏連覇を達成、ナインに胴上げされる箕島・尾藤監督
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 【内田雅也の広角追球】ある高校野球の監督が「私たちにとっては注目すべき改正です」と話していた。私学で、学校に籍がない外部指導者である。「これで身分がはっきりする。身が引き締まる」とも話した。

 中学、高校の部活動について、文部科学省が4月から外部人材を単独で部活動の指導、引率できる「部活動指導員」(仮称)として置けるよう法制化する。狙いは問題化している教員の長時間労働、多忙の軽減にある。

 これまで外部指導者は責任や待遇が曖昧で、顧問の補佐役にとどまっていた。学校教育法施行規則に明記し、学校教員に準じる役割を負うことができるようになる。

 高校野球で言えば、責任教師に限られていた大会への引率も可能になる見通しだ。日本高校野球連盟(高野連)の竹中雅彦事務局長は「文科省から正式な通達が届いたうえで検討する」と、まだ具体的な論議は行っていない。今後、スポーツ庁や各都道府県教育委員会などの意見も聞いたうえで審議に入る。「現場には外部指導者だけではなく、学校に勤め、より生徒の様子が分かる実習助手や非常勤講師もいる。指導員の範囲をどこまで広げるのかといった論点もある」

 高校野球は8月の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園大会)終了をもって新年度に入る。部活動指導員を盛り込む大会参加者資格規定の変更も早くても今秋の新チームからとなる。

 高野連によると、全国約3900校の監督で、教員や職員など学校に籍がない外部指導者は約5%。200人に満たない。今春の選抜高校野球に出場する32校の監督も23人が教員。残る9人のうち6人は学校職員で、他に生業を持つ外部指導者は3人だけだ。監督の職業についての規定はないのだが、教員監督が増えてきた。

 「教育の一環」とする高校野球にあって、監督は教育者でなくてはならない。教員不在の指導現場を文字通り監督することになる今回の法改正では、外部指導者の資質が問われることになる。

 ただし、実際には愛情も情熱もある外部監督が数多くいる。ごく一例だが、元箕島高監督の尾藤公さんの通夜、告別式(2011年3月8、9日)の光景を忘れない。和歌山県有田市の斎場には寒風吹きすさぶなか、教え子たちが長い行列をつくった。何も箕島野球部員、OBだけではない。他校や少年野球の指導者や選手、漁師やみかん農家といった地域の人びともいた。「お世話になった」「人生を教えられた」……とお礼と別れを告げにきていた。尾藤さんは教員にも勝る教育者だったと言える。

 「教師だけが教育者ではない。教室だけが教育の場ではない」と語ったのは、元高野連会長の佐伯達夫氏だった。

 1961(昭和36)年、夏の甲子園大会に出場した高田高(大分)の投手がプロから金銭を受け取っていたことが発覚。高田高は1年間の出場を停止された。処分に際し、国会から参考人として呼び出された席上、「教育者でもないのに教育の一環である高校野球を指導しているのか?」と聞かれたのに対して答えた。衆議院法務委員会の議事録にある。

 「学校の先生が教育者であって、先生じゃない者は教育者じゃないというものの考え方は間違っているんじゃないか」「校長や野球部長、県の体育関係者、それから野球人が寄って、相談して事をやってきておる」

 厳格に、あるべき高校野球の姿を守り通してきた「天皇」だった。野球人として、教育の一環を貫き通した。

 <野球のコーチというものは、寺子屋の師匠のようなものだ>と「学生野球の父」と呼ばれた飛田穂洲氏が『熱球三十年』(中公文庫)に書いている。<グラウンドというものは学校の教室のように冷たいものではない。(中略)呼吸も相通ずれば、手も触れあう。そこに自然の情愛がわく>。そして教え子との縁について<いつまでも親友たる関係が続けられる。これがコーチの余徳と言うてよい>。

 甲子園というひのき舞台ばかりではない。日々練習する学校の校庭、グラウンドで情愛のこもった指導を行う監督、コーチを数多く知る。教員だろうがなかろうが、彼らが教育者であることに違いはない。(編集委員)

 ◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963年2月、和歌山市生まれ。小学校卒業文集『21世紀のぼくたち』で「野球の記者をしている」と書いた。桐蔭高(旧制和歌山中)時代は怪腕。慶大卒。85年入社から野球担当一筋。大阪紙面のコラム『内田雅也の追球』は11年目を迎えた。

[ 2017年3月17日 08:30 ]

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